「レトロフリークでは吸い出せないカセットがある」と知って、Open Source Cartridge Reader(以下OSCR)を調べ始めた人向けの記事です。結論から書きます。OSCRは1台目の吸い出し機には向きません。レトロフリークで詰まったカセットを救うための2台目として選ぶ機械です。
理由は3つあります。はんだ付けと組み立てが前提であること、費用がレトロフリークと同じ価格帯まで膨らむこと、そして2026年6月に本家リポジトリがアーカイブされ、後継のファームウェアが「実験的」と明記されていることです。このあたりを曖昧にしたまま勧める記事が多いので、現状の確認から順に書きます。
そのうえで、買う・SDを用意する・ファームを書き込む・吸い出す、までの手順をまとめます。なお当ブログは自分が持っている実機とカセットから吸い出すことを前提にしています。ROMの配布サイトからダウンロードする話は扱いません。
結論:OSCRは「レトロフリークで詰んだカセット」専用の2台目

先に使い分けの早見表を置きます。どちらが優れているかではなく、役割が違うと考えてください。
| 比較する点 | レトロフリーク | OSCR(HW5) |
|---|---|---|
| 買ってすぐ使えるか | 使える(完成品) | 組み立てが前提(キット/一部ビルド済み) |
| 操作画面 | 日本語 | 英語 |
| 対応カセット | 主要9ハード | 直結7系統+アダプタで40機種以上 |
| 特殊カセット | 苦手なものがある | サテラビュー・サフミターボ等に対応 |
| セーブデータ(SRAM) | 本体内に取り込む仕様 | ファイルとして吸い出せる |
| 費用の目安 | 完成品の実売価格 | 部品代 約$134+工具・送料 |
| 向いている人 | これから吸い出しを始める人 | 吸い出せないカセットが手元にある人 |
つまり「手持ちのカセットがレトロフリークで吸い出せているなら、OSCRを買う理由はありません」。逆に、サテラビューのメモリパックやサフミターボ、各種アダプタが要る機種を持っているなら、OSCR以外に現実的な選択肢がほとんどない、という関係です。
1台目をまだ決めていない人は、先に吸い出し機器の比較記事を読んでから戻ってきてください。レトロフリークでの具体的な手順はレトロフリークでPCに吸い出す方法にまとめています。
2026年の前提:本家はアーカイブ済み。それでも使うのは旧リポジトリのV15.5

ここを知らずに買うと確実に混乱するので、最初に書きます。OSCRの開発体制は2026年に変わりました。
- 本家リポジトリ
sanni/cartreaderは2026年6月15日にアーカイブされ、読み取り専用になりました。移転先としてgithub.com/oscartreaderが案内されています。 - 移転先の組織には
oscr-firmware(ファームウェア)・oscr-databases(カセットのデータベース)・oscr-hardware(基板の設計データ)の3つが置かれています。 - ただし
oscr-firmwareには「highly experimental(きわめて実験的)」と書かれており、テストや開発に参加する人以外は旧リポジトリのファームウェアを使うように案内されています。
したがって2026年10月時点で実用に使うのは、旧リポジトリの V15.5(2025年2月1日公開)です。「アーカイブされた=使えなくなった」ではありません。基板もカセットも変わらないので、完成しているV15.5はそのまま動きます。
一方で、今後は新しいカセットのデータベース更新や不具合修正が旧リポジトリには入りません。買う前に理解しておくべき点はここです。「これから10年面倒を見てもらえる製品」ではなく、「今の完成度で固定された道具」として受け取ってください。この性質は、完成品として販売が続いているレトロフリークとの一番大きな違いです。
何が吸い出せるか|対応ハードと、レトロフリークとの本当の分かれ目

OSCRはArduino Mega用のシールド(拡張基板)で、PCに繋がなくても本体だけでSDカードへ吸い出せます。直結で対応するのは次の系統です。
- ファミコン/NES(ファミリーベーシックを含む)
- スーパーファミコン/SNES(SFメモリ・サテラビュー・サフミターボ・ゲームプロセッサRAMカセットを含む)
- ニンテンドー64(コントローラパック・Gameshark・Xplorer 64)
- ゲームボーイカラー(GBメモリ・Codebreaker・Gameshark)
- ゲームボーイアドバンス
- メガドライブ/ジェネシス
- セガ・マスターシステム(マークIII)
さらにアダプタを足すと40機種以上に広がります。バーチャルボーイ、Atari系、PCエンジン、ワンダースワンなどが含まれます。
太字にした部分が、レトロフリークとの分かれ目です。サテラビューやサフミターボ、GBメモリ、N64のコントローラパックといった「普通のROMカセットではないもの」を扱えるかどうかが、OSCRを選ぶ理由のほぼ全部だと考えてかまいません。PCエンジンのCD-ROM²のBIOSのようにレトロフリーク側で完結する作業もあるので、自分の持ち物と照らし合わせてから決めてください。
買う|DIYキットとビルド済み、費用は約4から

現行の基板はHW5です。主に必要なものは次のとおりです。
- Arduino Mega 2560 Pro
- MKS MINI12864 V3 LCD(表示部)
- SI5351クロックジェネレータ(RTCとの結合モジュールもある)
- 専用基板(メイン基板+アダプタ基板)
- 3Dプリントの筐体・スタンド
- ピンヘッダ、各ハードのカセットスロット、M2のネジとスペーサー、抵抗、コンデンサ、LED、スライドスイッチ、SDカード
公式の見積もりは合計で約$134です(AliExpressの部品が約$94、基板と3Dプリントが約$40。税・送料込みの概算)。日本から買う場合は送料と待ち時間が上に乗ります。
「はんだ付けはしたくない」人向けの選択肢もあります。米国のStarshadeRETROが「OSCR HW5 Complete Kit DIY」として一式を扱っており、CICモジュールのように組み立て済み・書き込み済みで売られている部品もあります。RTCとクロックジェネレータの結合モジュールは、日本のSave the Hero Buildersでも扱いがあります。
ここで正直に書いておきます。キットを買ってもスロットのはんだ付けは残ります。「完成品が届く」わけではありません。費用も$134に工具・送料を足すと、レトロフリークの完成品と同じ価格帯に届きます。価格で選ぶ機械ではなく、対応カセットで選ぶ機械です。レトロフリークの実売価格は変動するので、買う時点で見比べてください。
準備①SDカード|32GB以下・FAT32が速い

つまずく人が多い工程なので、公式の指定をそのまま書きます。
- 対応するのはFAT・FAT32・exFATでフォーマットしたSDカードで、容量の上限はありません。
- ただし公式は32GB以下を推奨しています。それより大きくても意味がない、という理由です。
- exFATはFAT32より遅くなります(64bit整数を使うため)。FAT32を選んでください。
中身の用意はこうします。
- 最新リリース(V15.5)の「Portable」のzipをダウンロードする。
- zipの中の「SD Card」フォルダを開く。
- そのフォルダ内のファイルを全部選んで、SDカードへドラッグする(フォルダごとではなく、中身を)。
- コピーしたファイルを、プロパティから隠しファイル属性にする。
吸い出したデータをPCへ移すときのカードリーダーは、持っていなければ一緒に用意しておくと手戻りがありません。
準備②ファームウェアの書き込み|config.hで触るのは3か所

OSCRのファームウェアは、完成したファイルを流し込むのではなくArduino IDEでソースをコンパイルして書き込みます。手順は次のとおりです。
- 先にCH341のドライバを入れる(Windowsの場合)。これを飛ばすとポートが出てきません。
- リリースに含まれるlibraries フォルダを、Arduinoのフォルダへコピーする。
config.hを開いて、自分の基板のバージョン(HW5など)の行の//を外す。- クロックジェネレータを載せていない場合は
#define clockgen_installedをコメントアウトする(行頭に//を付ける)。 - 使う拡張モジュールがあれば
#define ENABLE_XXXの//を外す。多くを同時に有効にすると、既定のモジュールを切る必要が出ます(容量の都合です)。 - Arduino IDEの「ボード」で「Arduino Mega or Mega 2560」を選び、「ポート」で接続先のCOMポートを選ぶ。
- Sketch →「Upload」で書き込む。
書き込みの前後で守ることが3つあります。カセットは全部抜いておく。電圧スイッチを5Vにして電源を入れてから書き込む。書き込んだあとはSDカード側のデータベースも同じバージョンに更新する。最後の1つを忘れると、カセットの判定が合わなくなります。
吸い出す|端子清掃 → 本体操作 → セーブ(SRAM)も一緒に救出

ここからが本番ですが、成功率を決めるのは機械ではなく端子の状態です。読み取りエラーの大半は接触不良で、OSCRでもレトロフリークでも同じです。先に清掃してください。
- カセットの金属端子を無水エタノールを含ませた綿棒で拭く。黒い汚れが取れるまで何本か使う。
- 完全に乾かす。濡れたまま挿さない。
- それでも読まないときだけ、接点復活剤を少量。やり方を間違えると逆効果なので、接点復活剤の使い方の手順どおりに使ってください。
- OSCRにカセットを挿し、電圧スイッチをそのカセットの正しい電圧に合わせてから電源を入れる。
- 液晶のメニューから対象のハードを選び、ROMの読み出しを実行する。SDカードにファイルが作られます。
そして、ROMと一緒にセーブデータも吸い出してください。OSCRはスーパーファミコンのSRAMやN64のコントローラパックをファイルとして取り出せます。ここはレトロフリークと性格が違う部分で、OSCRを買う価値が一番はっきり出るところです。
急ぐ理由があります。カセット内のセーブを保持しているのは電池で、電池は切れます。切れた瞬間に、何十時間分かが消えます。吸い出せる機械が手元にある今のうちに、セーブだけでも全部抜いておいてください。
うまくいかないときの確認順とFAQ

症状ごとに、上から順に潰してください。
| 症状 | 先に見るところ |
|---|---|
| 書き込み時にポートが出ない | CH341ドライバが入っているか |
| 電源は入るが表示が出ない/動作が変 | config.hの基板バージョンの指定が実機と合っているか |
| 一部の機能が動かない | clockgen_installedの指定が実装と合っているか |
| カセットが認識されない | 端子清掃と挿し直し。次に電圧スイッチ |
| カセットの判定名がおかしい | SDカードのデータベースがファームと同じバージョンか |
| 吸い出しが遅い | SDがexFATになっていないか(FAT32にする) |
Q. アーカイブされたファームウェアを使って大丈夫ですか。
A. 動作に問題はありません。基板もカセットも変わらないためです。ただし今後の修正やデータベース更新は入りません。移転先の新しいファームウェアは、公式が「実験的」としており、テストや開発に参加する人向けです。
Q. はんだ付けなしで完成品だけ買えますか。
A. 一部のモジュールは組み立て済みで売られていますが、カセットスロットのはんだ付けは残ります。完全な完成品が欲しいなら、素直にレトロフリークを選ぶほうが早いです。
Q. レトロフリークとどちらを先に買うべきですか。
A. レトロフリークです。OSCRは「レトロフリークで吸い出せないカセットが実際に手元にある」と分かってから買う機械です。
Q. 吸い出したファイルはそのまま遊べますか。
A. PC側のエミュレータに読み込ませれば遊べます。手順はPCでレトロゲームを遊ぶ完全ガイドにまとめています。吸い出すのは自分が所有するカセットだけにしてください。
まとめ|買う前に、手持ちのカセットを確認する

この記事の結論をもう一度まとめます。
- OSCRは2台目の機械。1台目にはレトロフリークを選ぶほうが確実です。
- 買う理由は対応カセット。サテラビュー・サフミターボ・GBメモリ・N64コントローラパックなど、普通のROMカセット以外を持っているかどうかで決まります。
- 2026年6月に本家はアーカイブ済み。実用はV15.5で固定されており、後継ファームは実験的な位置づけです。
- 準備で失敗しやすいのはSDとconfig.h。32GB以下のFAT32、基板バージョンとクロックジェネレータの指定、書き込み後のデータベース更新。
- ROMより先にセーブを吸い出す。電池が切れたデータは戻りません。
まずは手持ちのカセットを並べて、レトロフリークで吸い出せないものが何本あるかを数えてください。0本なら、今日は何も買わなくていい日です。1本でもあるなら、この記事の順番どおりに進めれば吸い出せます。






































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